多彩な個性と才能を受け入れ,開花させる
Introduction
校名の「実践」にふさわしく,生徒各自が職業観を持ち,それを学問に結び付けて進路を選べるようなキャリア教育が展開されます。特進コース,選抜コース,総合進学コースという3つのコースごとの,独自の教育活動が特徴です。生徒数約1,500名の大規模校ですが,先生は生徒とじっくりと向き合い,一人ひとりの進路希望に寄り添います。
進路傾向
特進コースの大学現役進学率は約80%。選抜コースは大学に進学する生徒が4分の3を占め,短大・専門学校進学者は15%ほどです。総合進学コースの生徒は約60%が大学,30%強は短大・専門学校に進学しています。
一般的に近年は,学校推薦型選抜や総合型選抜による大学入学者が増加傾向にあります。八王子実践はコースによって異なり,特進コースは9割近くが一般選抜にチャレンジ。選抜コースは大学進学者のうち,4分の3が学校推薦型選抜または総合型選抜を利用しています。総合進学コースは大学進学者の9割以上が学校推薦型選抜または総合型選抜を利用。特に学校推薦型選抜の指定校制の割合が高く,進学者の6割以上に上ります。
大学進学者の文理比率は,全体で6:4くらい。学部・学科は多種多様ですが,経済や情報など,実学系が比較的人気です。
専修・各種学校の進学先で多い分野は,看護医療,美容,調理などとなっています。
3年間の進路サポートの流れ
進路指導は段階を踏んで進められるよう,学年ごとにねらいを定めています。コースを問わず共通する進路行事・講座は以下の通りです。
学年 | ねらい | 主な進路行事・講座 |
1年次 | 職業観や自分の生き方を考える | キャリアガイダンス,面談 etc. |
2年次 | 自己の適性を踏まえ,上級学校への興味を持つ | キャリアガイダンス,上級学校模擬授業,卒業生による合格報告会,面談 etc. |
3年次 | 志望校を分析・対策し,進路実現へ | 進路ガイダンス,志望理由書講座,面接講座,看護医療ガイダンス,模擬試験,面談 etc. |
1・2年次対象のキャリアガイダンスは「業界職業研究ガイダンス」と「学問・分野研究ガイダンス」が開かれ,職業や学部・学科の理解を深めます。『高校受験案内』巻頭特集で紹介した藤江和奏(ふじえわかな)さんは、ガイダンス当時,まだ志望分野が見えず,薬学,栄養,美術など,興味があった複数の分野の話を聞きました。後に大学で何を学ぶかを考える時,このガイダンスも参考にして,薬学の道を選びました。
2年次の上級学校模擬授業は,30以上の大学・短大・専門学校を招いて行われます。
3年次は受験に直結する実用的な内容です。
放課後学習サポート
本校入学者に志望動機を尋ねると「学習サポートの充実」が多数挙がります。その要と言えるのが,校内予備校「J-Plus」。1年次より,J-PlusルームやJ-Labでの講義受講のほか,サポートセンターでは個別に質問ができ,勉強方法のアドバイス,学習スケジュール作成の支援も得られます。19:40(土曜日は17:50)まで開いており,自習ブースも設置。部活動の後に講義を受けたり,自習したりと,部活動との両立が可能です。
コースごとの特徴あるキャリア教育
コース制に加えて,目標や適性に合わせたクラスが編成されています。
1年次 | 2・3年次 | |
特進コース | J特進クラス(特待生) 特選クラス(入学金免除) 特進クラス |
J特進クラス(文理混合) |
選抜コース | 難関~中堅私大クラス(文系/理系) 私大受験クラス(文系/理系) |
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総合進学コース | 先進科学クラス 看護医療クラス 国際教養クラス 総合教養クラス |
国公立大学が目標 特進コース
高い学力と豊かな人間性を備えた人材を育成しています。全員がJ-Plusで勉強するほか,1・2年次合同で「J-CLAP」という探究学習に取り組み,身の回りや社会の課題に目を向けます。この探究学習が進路の指針となったり,大学入試に活かされたりする生徒はよく見られます。また,ここで学んだ調査の仕方や身近なことからどのように問いを導き出すかという発想法などは,大学でも社会に出てからも役立ちます。
難関私立大学をめざす 選抜コース
PBL(Project Based Learning/Problem Based Learning)を「総合的な探究の時間」で実施すると共に,通常科目でも取り入れています。課題に向き合う中で知的好奇心が育まれ,仲間と協働して課題解決へ。課題解決能力を踏まえた学力をつけることで,キャリアを自ら切り拓き,形成する力が培われます。J-Plusは希望制。
高大専連携による新しい学び 総合進学コース
「総合的な探究の時間」で,文章力養成のための表現トレーニングや外部講師による進路講演会などを実施。2年次にはクラス別にSDGsスタディーツアーが行われます。例えば,総合教養クラスは有機農業と循環型農業の実態を学びました(2023年度)。
大学志望者増に対応し,2024年度より希望者はJ-Plusを利用可。
2年次からは4つのクラスごとに外部の教育機関と連携。生徒の興味・関心を刺激し,進路意識を高める講座を用意しています。
【先進科学クラス】 東京工科大学や日本工学院八王子専門学校で,loTロボティクス,プログラミング,AIリテラシーなどの分野を学習。理系大学進学へとつながります。
【看護医療クラス】 看護医療系予備校「ena看護」の講座や面接指導,情報提供を受けられます。これまでは放課後の選択講座でしたが,看護医療系の志望者増に伴い,2024年度よりクラスとして設置されました。
【国際教養クラス】 外国語学習に重きをおいたクラス。拓殖大学の外国語学部・国際学部との連携による英語探究,第二外国語探究の授業があり,留学生と交流することも。
【総合教養クラス】 日本工学院専門学校によるスポーツトレーナー養成講座を開講。資格取得講座も設けられ,多方面の進路に対応しています。
自分の道が見つかる方法は十人十色
総合進学コース卒業生の藤江さんは,進路先を簡単には決められませんでした。美術系の専門学校を志していましたが,憧れていたイラストの仕事を考え直し,大学進学に方向転換。どの分野に進んだらよいかと,自分の興味を追究し,大学・学部・学科,職業,研究などについて,調べに調べ,熟考しました。理系科目が好きで先進科学クラスを選択していたので,目が向いたのは化学や生物の分野,中でも薬学です。そして,新薬を創り出す研究にたどり着きます。東京工科大学応用生物学部に惹かれつつ,高大専連携講座で体験したプログラミングに興味が傾いたことも。最終的には,東京薬科大学の「未来創薬人育成プログラム」を履修したいと,生命科学部分子生命科学科を指定校推薦で受験することにしました。
年2回の面談は,進路についてよく考える機会になりました。面談があるから考えを整理しておかなきゃと思いましたし,面談で話すと,もっとしっかり調べた方がいいなって思うことが出てきて,面談後さらに調べました。情報は多ければ多いほど良く,やりたいことがなくても,調べていったら見つかるかもしれません。
指定校推薦は合格の可能性が非常に高い入試ですが,楽なわけではありません。
まず,指定校推薦は評定平均値などの学力基準が設けられています。藤江さんは成績優秀でクリアしましたが,校内選考を突破する必要があります。特進コースや選抜コースの生徒の存在は脅威です。もし他の生徒が優っていて推薦権を手にできなければ,入試区分または志望校の考え直しです。心配しながら校内選考を待ちましたが,推薦権を獲得!
次は出願準備です。藤江さんは1年次に志望理由書を書く練習はしていましたが,指定校推薦で提出するのは自己推薦書。控え目な彼女は,自分をアピールすることが苦手で,自分の何をアピールすればよいか,悩みました。友達に聞いたり,自分の学校生活を振り返って考えたりしてまとめ,担任の先生に何度も添削してもらって,書き上げました。出願し,いよいよ合格発表。不合格の可能性は低いとは言え,不安な日々を過ごした上で合格を得られ,心底ほっとしたそうです。
藤江さんは,進路の方向性を定める時も,志望大学を決める時も,自己推薦書を書く時も,自分を見つめ直し,必要に応じて徹底的に調べ,熟慮して,自分の答えを見つけました。何かきっかけがあって,一気に道が拓けるケースもあれば,藤江さんのように考え抜いて導き出すケースもあります。物事との出合いのタイミングやその人の性格などにより,進路の見つけ方は多種多様だということです。
新時代に向け,生徒のニーズに応える改革を
2026年に創立100周年を迎える八王子実践は,多彩な個性と才能が集い,個々の生徒が自分らしく輝ける学校です。これまでも生徒のニーズを汲み取り,成長を後押しするため,様々な改革を行ってきました。今後も,来る次の100年,新時代に向けて,生徒の意欲と秘めた力を伸ばすための改革を推進予定です。生徒がチャレンジし続けられるよう,先生方が全力でサポートします。
東京純心女子 高等学校
東京CPA会計学院 高等課程
コロンビアインターナショナルスクール 専修学校高等課程
ここでは教育の詳細をレポートしましたが,書籍の『首都圏高校受験案内』では,学校基礎情報や,ほかの教育内容,進路情報,入試情報,クラブ活動などを紹介。偏差値,合格・不合格者の分布図からは,合格のめやすがわかります。