◎教えて先輩! 志望校・進路の決め方♯2<br>八王子実践 高等学校 | 晶文社 高校受験案内

◎教えて先輩! 志望校・進路の決め方♯2
八王子実践 高等学校

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大人が少しだけ背中を押してあげれば,生徒はいろんなことに挑戦できる

Introduction

 八王子実践は3コース制をとっており,入学時の学力も希望進路も,いい意味でバラバラ,十人十色です。キャリア教育の特徴は,

  • コースの特性を生かした特色ある取り組み。
  • 生徒を観ながら担任団で常に考え,それぞれの進路希望に対応すること。

にあります。生徒数1,500名を超える大規模校でありながら,一人ひとりの生徒としっかり向き合い,多様な進路希望を実現していきます。
 まず大きな枠組みとして,コースごとにどのような進路指導を行っているのでしょう。

難関国公立・私立大学が目標 特進コース

 1・2年次合同で「J-CLAP」という探究学習に全員が取り組み,身の回りや社会の課題に目を向けます。3年次には希望する生徒に,総合型選抜,学校推薦型選抜の受験に向けた「志望理由書講座」を開講。一般選抜で難関国公立大学・最難関私立大学を志す学習支援プラン「Jシリーズ」と合わせ,どの入試区分でも合格を得られるよう,サポート体制を整えています。

難関・中堅私立大学をめざす 選抜コース

 基本的には,部活動・学校行事などの高校生活を思いっきり楽しみながら,特進コース同様「Jシリーズ」を利用して学力を向上。どのようなタイプの入試区分にも対応できるシステムで,生徒を支援します。また,PBL*を「総合的な探究の時間」だけでなく,通常科目でも取り入れています。

*PBL▶Project Based Learningの略。生徒自らが課題を発見し,解決する能力を養う教育方法で,答えに達するまでの過程が大切であることを学びます。

幅広い進路に対応する 総合進学コース

 2年次に「先進科学クラス」「国際教養クラス」「総合教養クラス」に分かれます。クラスの特性に応じた高大専連携授業が行われ,東京工科大学や拓殖大学,日本工学院八王子専門学校で実際に講座を受講。それらは高校の単位として認められます。そして,興味・関心が刺激される体験を得て,進路を考えるようになります。

サポートセンター
個人自習ブース
J-Plusルーム

J-CLAPは「興味関心×学問=社会の幸福」につながる探究学習

 ここからは,特進コースの取り組みを紹介します。
「実践生が創造的に学ぶ,大きな志のあるプロジェクトに向かって」という意味の「Jissen Creative Learning for Ambitious Project」を略して「J-CLAP」。学ぶ中で互いを讃える拍手(CLAP)が生まれるような場所であってほしいという願いが込められたネーミングです。
 いわゆる5教科のペーパーテストが得意な生徒もいれば,そこでは測れない力を持っている生徒もいます。J-CLAPは5教科の学びをどのように未来に活かしていくかを考える時間として,週1時間設定。1・2年次合同で全員が行い,学期ごとに課題を提出。どんなテーマにするか,1人で取り組むか,チームを作るか,どこで活動するかなど,あらゆることが生徒に委ねられ,複数の先生で構成される委員の中から,生徒ごとに担当を決めてサポートします。好きなこと,興味・関心のあることを学び,それを社会の幸福につなげていく,特進コース独自の探究学習です。

取り組み例
  • 農家の高齢化に課題意識を持ったことによる,根菜の水耕栽培
  • 図書館に行って消しゴムのカスをひたすら集めたらどこまで大きくなるか
  • 身長を伸ばすために必要な条件は?
  • アニメの必殺技がいかに最強であるか,物理学の視点から計算
  • ガソリン車廃止は本当に社会の役に立つのか

 この探究学習から,将来の夢や目標,成し遂げたいことを見出す生徒が少なくありません。志望する大学・学部・学科を決定づけたり,探究学習の成果を武器に総合型選抜や学校推薦型選抜に臨んだりする生徒もいます。

J-CLAP 1年間の流れ
時 期 内 容
4~6月 テーマ・内容など決定。各自,取り組む。
7月 【中間発表会】2学年合同開催。iPadを使ってプレゼンテーション資料を作成し,スライドにしてiPadに映し出して展示。外部の方からコメントをもらったり,中学生に見てもらったりする。
9~11月 さらに研究を進める。
12月 【最終発表会】事前に生徒間投票と教員投票によって選ばれた代表の約10チームが,ホールで発表。最優秀を1点選出。
3学期 【1年生】次年度に向けて今の研究を深めたり,2年次のテーマを考えたりする。
【2年生】論文執筆。これまで取り組んできたことをスライドではなく,文字に起こす。
東京工科大学のホールにて最終発表会を開催(2021年度)

自己を見つめ,生き方をも考える「志望理由書講座」

 特進コースにおいて,1・2年次の探究学習での取り組みを入試に生かしたい生徒や,将来の目標が明確な生徒は,一般選抜プラスアルファで,総合型選抜や学校推薦型選抜などにチャレンジしていきます。合格するには,内容の濃い志望理由書を書く必要があり,「志望理由書講座」が放課後に開講されています。探究学習は3年次になると「志望理由書講座」という,入試に特化した希望制の講座に接続する流れになっています。
 3年次の1学期~夏休みにかけて,外部講師による講座を何回か受講し,その後は生徒一人ひとりに担当教員がついて,入試本番まで毎日のようにケアしてもらうことができます。
「志望理由書講座」は受験指導のように思えますが,キャリア教育の一環です。探究学習で身につけたスキルや,研究してきたことを生かし,なぜその大学・学部・学科を志望するのか,なぜこの課題を探究してきたか,将来どんな研究がしたいか,その研究はどう社会に必要かといった志望理由を明確にしていきます。
 説得力のある志望理由書を仕上げるため,更なる調査や研究に取り組むこともあります。志望理由を突き詰めるうちに迷いや悩みが生じ,自分と向き合い,人生や生き方を考えるに至ることもあります。もはや受験準備の域を超え,キャリア形成の第一段階とも言えるでしょう。

J-CLAP→志望理由書講座→進路実現へとつながった例
  • 認知症ケアの研究で,東京都立大学へ進学
  • 虐待された児童を癒す地域づくりという研究で,明治学院大学へ進学
  • 地域にAEDの設置する活動により,慶應義塾大学へ進学
  • 献血を高校生に広める活動により,明治大学へ進学
  • カラスがなぜ嫌われるのかの研究で,東京外国語大学へ進学

新しい見方に出合って広がった選択肢

 ここで,『高校受験案内』の誌面に登場した卒業生 畑中くんの別のお話を紹介します。
 学校の進路関連の取り組みで,畑中くんが最も影響を受けたのが「志望理由書講座」。1・2年の頃は大学を就職の前段階と考え,「偏差値が高い」とか,「就職率がよいな」くらいしか見ていなかったそうです。しかし,志望理由書講座で様々な話を聞くうちに,「こんな研究をしているんだ」という別の角度から見ることができるように。大学を研究機関として捉えるという見方を知り,選択肢が広がったということです。
 また,目標の進路に進むために最も努力したことを尋ねると,「自分の研究したいことは,医学系の知識を持っていることが前提となるので,それを掴むのが大変だった」と話してくれました。研究領域の専門知識は,一般的には大学で学ぶものでしょう。それを高校で身につけていたとは驚きです。畑中くんの夢は,認知症ケアの評価を機械が行って定量的に判断するシステムを作ること。しかし原理を同じくする研究はあるものの,認知症にはまだ応用されていません。未知の研究に着手しようとしているのです。夢を実現するために,高度な研究を行う大学をめざしており,合格するには,中身の詰まった志望理由書を書く必要がありました。そして,高校生には難しい分野まで学ぶことで,自分の研究が人の役に立つのか,世の中に必要なのかという研究意義を再認識して自信を持ち,使命感とも言えるモチベーションにつながったのです。

東京都立大学に公募推薦で合格! 畑中悠くん
八王子実践高等学校特進コース2022年3月卒業
東京都立大学システムデザイン学部 情報科学科1年

一番成長を感じるのは「失敗を気にせず挑戦する瞬間」

 畑中くんが在籍していた特進コースの担任で,3年間見守り,サポートし続けてきた吉田麻美先生にもインタビュー。サポートする上で留意していること,生徒の成長を感じる瞬間,嬉しい瞬間を聞きました。
「今の生徒たちは皆,とても真面目で,”失敗したくない,安全・安心がほしい“,と考える人が多く,“挑戦できる勇気を持たせる” ことが一番大切だと感じています。“私もできるんだ” という気持ちで,最後まで諦めないように声を掛けたり,情報を収集して裏付けとなるデータを生徒に提示したりしています。ZoomやClassiというインターネット上のツールを使って気軽に相談できる環境が整っており,意識して活用しています。大人側が少しだけ背中を押してあげれば,いろんなことに挑戦できるようになるので,難題に向かって一歩踏み出した瞬間が一番嬉しい成長の瞬間です。」
 時には厳しいことを言って生徒の心に火をつけたり,必要な情報を生徒に示すに留め,あとは生徒が自分で考え行動するのを見守ったり……。八王子実践の先生方は,一人ひとりの生徒をよく見て,生徒に合わせてバックアップ。生徒はそれを受けて一歩を踏み出し,羽ばたいています。

吉田麻美先生
吉田麻美先生

推薦系の大学入試では「志望理由書講座」がキーになってきます。一般選抜は日常的に応援するのが一番大事。

八王子実践 高等学校
https://www.hachioji-jissen.ac.jp/high/
『首都圏 高校受験案内 2023年度用』本文p.430
●所在地:東京都八王子市
●共学校
●1926年創立
●普通科(特進コース/選抜コース/総合進学コース)

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ここではキャリア教育の詳細をレポートしましたが,書籍の『首都圏高校受験案内』では,学校基礎情報や,ほかの教育内容,進路情報,入試情報,クラブ活動などを紹介。偏差値,合格・不合格者の分布図からは,合格のめやすがわかります。

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