将来を見据えて考え,一本筋の通ったビジョンを立てる
Introduction
東亜学園が進路指導のポリシーとしているのは,「先のことまで考え,一本筋を通すこと」と進路指導主事の阿藤庸泰先生は話します。高校卒業後の進学をゴールとするのではなく,その先の目標を定め,そこから逆算していくと,高校卒業後に進む道や,そのために必要なこと,今やらなければならないことなどが見えてきます。その一つひとつが,現在から将来の目標に向かって伸びる一本の筋の上に乗っています。
高校生の段階では,目標や考え方が変わることはよくあります。今後も変わるかもしれません。でも,変わってもよいのです。「重要なのは,高校卒業前にある程度の筋を通すこと」(阿藤先生)。方向を変えることになっても,自分で考え調べて,その筋を引き直すことができる生徒であってほしいと願います。
将来をよく考え,キャリアデザインした上で選び取った進路の傾向を見てみましょう。

進路傾向
2022年3月卒業生の進路内訳は,大学進学が約8割,専門学校進学は約1割,短大進学・就職・進学準備・その他を合わせて約1割。文系と理系の比率はだいたい7:3です。
大学の学部で多いのは,経済・経営・法学部といった社会科学系,次いで文学部となっています。理系は理工系,保健医療系の順です。
専門学校のジャンルも,看護,リハビリテーション,放射線,臨床など,保健医療系が多いという特徴が出ています。専門学校への進学は,将来の目標(職業)を決め,大学で学ぶのがよいか,専門学校が最善なのかを見定めた結果です。
大学受験での入試区分の傾向
本校では,総合型選抜と学校推薦型選抜の利用が大学受験者の約6割を占めます。ここ数年,年内に合否がわかるこれらの受験者は増えています。しかしこの選択は,一般選抜を回避し,早く進路を決めたいという安易なものではなく,その大学に入りたいという意志によるものです。
学校選びの注意点
専門学校の分野は多岐にわたり,華やかな学校もあって印象だけで選びかねないケースが見受けられるので,志望校選びには注意が必要です。学校を見学するのは勿論ですが,1校目で決めないこと。複数の学校を比較したり,取得したい資格の要件を満たしているか,中途退学者が多くないかなどを調べたりして,吟味するよう指導しています。
また,オープンキャンパスには必ず参加すること。これは専門学校も大学も同じです。予約が取りづらかったり,オンライン開催だったりもしますが,実際に学校に行ってみると印象が変わることは多々あるので,学校を訪れずに受験するのは危険です。
大学選び,特に総合型選抜と学校推薦型選抜の受験にあたっては,志望大学の次の3点を調べて理解していることが重要です。その大学に合う・合わないが見えてきますし,なぜその大学が良いかも明確になります。
①どのような人の入学を望んでいるか。
②どのような教育課程で,どのような教育を行い,どう評価しているか。
③どのような力を身につけられるのか,卒業したらどうしたいか。

何のために勉強するの? 目的意識がなければ続かない
自分は何がしたいのか,何ができるのか,何をすべきなのか,それはなぜ,何のためにするのか,自分が置かれた環境の何を使ったらよいのか,どういう努力が必要か… 自分の内面を見つめ,漠然としていた自分というものを突き詰めて考えることで,アイデンティティの確立にもつながります。自分の中の抽象的な概念をまとめることから始まり,自分の適性や能力を知り,目標を見つけ,目標を達成するために必要なことを考え,今すべきことを確認していく。だんだんと具体的になってきて,行動に移せるようになります。
「何のために勉強するのか?」立場によっていろんな答えがありますが,進路指導の立場では「自己実現するため」だと阿藤先生は考えます。ただ勉強しても,いずれ精神的に行き詰まり,続かないでしょう。「夢を叶えるために○○大学で学びたい」という目的意識を持つことで,努力し続けることができるのです。
キャリア教育の流れ
将来の目標を決めるため,様々な取り組みが用意されていますが,学年ごとに以下のような意図があります。生徒が自分の生き方を考えながら目標を設定する流れになっており,キャリア教育と言えます。
【1年次】将来を考える
どんな職業があるのか,多種多様な職業があることを知り,どんな仕事に就きたいかを考えてもらう。秋以降には,自己実現に適したコース(2年次~)を検討。
【2年次】第1志望決定
大学生や専門学校生の話を聞いたり,大学の研究室を見学したりと,高等教育に直接,触れる機会を設定。自分もこうなりたい,こんな所で学びたいと感じることで,「自分のこと」と捉えてもらう。卒業後の進路先を見定め,年明けには「第1志望届」を提出。
【3年次】具体的な準備
目標とした進路に向けて,どんな準備が必要か。実際に行動に移して進める。

目標から逆算する考え方
将来の目標を決めたら,そこから,いま何が必要かまで遡ります。どのように考えていくか,具体例を紹介します。
将来の目標・職業を定める。
↓
将来の目標を達成するため,高校卒業後の進路は何が最適か。
↓
大学進学ならば,どのような分野か,どの大学か。
↓
その大学のどの入試区分が自分に合っているか,必要条件を満たしているか。
↓
入試区分により,何を準備すればよいか。必要な書類や資格はあるか。
↓
授業の科目選択はどうすればよいか。必要な学習は何か。
↓
最適なコースはどこか。

2年次からの科目選択の前段階としてコース選択があり,コース選択はキャリアを考える入口です。
教育理念に基づく活動が入試にも人生にも活きてくる
人間形成教育と実力養成教育を柱とする本校では,教育理念に基づいた取り組みが数多く展開されています。それらすべてが複合的,総合的に生徒の力となっています。総合型選抜受験者が増える中,思考力,多面的なものの見方,論じる力,表現力や,他者の意見を聞き価値感の違いを受け入れる素養,コミュニケーション力などを養成。それらは受験時のみならず,卒業してからの人生にも活かされています。
特に特徴的な独自の取り組みを2つ取り上げます。
文化教育
考える→調べる→話し合う→表現する,という活動がベース。他者の意見を聞き,自分と違う価値観があることを知った上で,自分の考えをどのように明確に表現していくか。ディベートやプレゼンテーションを行ったり,文章化したりして学んでいきます。
1年次は「どう生きるか」をテーマとして,幸福,職業,人生などについて考えます。
2年次は,格差社会,ジェンダーフリー,安楽死,臓器提供,功利主義と民主主義といった答えのない社会的なテーマで,思考トレーニングを積みます。後期は各自テーマを設定し,調べた内容をもとに自分の主張を,パワーポイントなどを使用してプレゼンしていきます。
3年次は教育,環境,医療,福祉,政治,経済,科学技術など,分野ごとの時事的なテーマを考える機会となっています。

校技「弁論」
「校技」というと武道を思い浮かべるかもしれませんが,本校では,「弁論」を校技としています。
論文を執筆し,クラス内での選考,学年選考を経て,3次選考で選ばれた十数名がホールで発表。テーマは自由ですが,自分の体験に基づいていることがポイントです。
『高校受験案内』の特集記事でインタビューした柳さんは,韓流ドラマを見て興味を持ったことから「朝鮮戦争」をテーマに,今の日本にはない兵役にも目を向け,戦争を終結させるための解決策を論じ,3次予選まで進みました。
夢の実現をサポートする入試対策
実力養成教育の一環として用意されている入試対策の中から2つを紹介します。
D-project
Dreams Come True Projects,略して「D-Project」。校内で家庭学習を完結させようという,自立学習支援システムです。自習エリア,質問コーナー,面談室・情報センター,個別指導コーナーが整備されていて,20:00まで利用可。単なる自習室と違い,「システム」とされるのは,教科連動型という点にあります。教科担当の先生が,授業で理解の足りていなかった単元を補う課題や,様々な学習プリントを用意しています。


オンライン英会話
大学の総合型選抜や学校推薦型選抜の出願資格に英語の資格が上がっていることは珍しくなくなりました。中には英語検定2級の何点以上という具体的な条件や,英語試験免除も。そこで,英語検定対策として,授業にオンライン英会話を導入しました。iPadを使い,1年次に全員が外国人インストラクターからマンツーマンでレッスンを受けられます。2年次での準2級・2級取得が目標です。

信念を持ち続けて努力することが成功につながる
ここでまた,前述の柳さんのエピソードを詳しくお伝えします。
彼女は3年次になっても学力が伸び悩み,模試の判定も芳しくなかったそうです。そこで,夏休み前から「1日10時間勉強」を自分に課します。学習計画を立て,きっちりこなしていきましたが,成績に変化は見られず。それでも,思い悩んだり迷ったりすることはなかったと言います。目標に向かい続ける信念はどこから生まれたのでしょう。
柳さんはチアリーダー部に所属。チームワークや仲間と支え合って頑張る姿勢,やり遂げる精神力などが培われました。部活を3年次の夏に引退すると,D-Projectを利用し,友達と一緒に「○時まで頑張ろう」と日々勉強。友達が頑張る姿を見て,自分も勉強を続けることができたそうです。

担任の先生は柳さんが,こうと決めたら強い意志を持ってやり通すことのできる生徒だと信じていました。模試の成績が振るわなくても,「これからまだまだ伸びるよ」と励まします。その言葉通り,12月以降にぐんぐんアップ。
入試期間に入り,出願した大学の倍率が高いことを知ると,さすがに柳さんも不安に。しかし,ポジティブ思考の友達の「(倍率が高くても低くても)やることは変わらないじゃない」という言葉に助けられました。それからは倍率を見ないようにし,過去問題を解くなど,志望校対策に専念。受験直前の学習時間は1日12~13時間にも及びました。
これだけ勉強したにも関わらず,最初の3校の出来はあまり良くなかったそうです。モチベーションが下がりかけましたが,ここで次のテストに引きずったら後悔すると思い,気力を振り絞って気持ちを切り替えます。努力は報われ,学習院大学に合格!

東亜学園高等学校文系選抜コース2022年3月卒業
学習院大学経済学部 経営学科1年
進路指導主事の阿藤先生は「信念を持って取り組むうちに,何をすべきかが見えてきます。柳さんは,学習院大学に行くためにはこれをやるんだ,という自分のやるべきことがわかっていました。学校の諸活動に取り組める生徒は入試の結果もよいし,大学に入っても,卒業してもうまくいく。一本筋が通っていると感じます」と話していました。
柳さんのエピソードが教えてくれるのは,充実した高校生活が柳さんの力になったということ,自分の力を信じて努力すれば結果につながるということ。東亜学園での多彩な教育や活動のそれぞれが歯車と考えると,多数の歯車が各所で噛み合い,お互いの動力で更なる力を生み出していると言えます。この重層的で厚みのある力を持った生徒たちは,未来を力強く生き抜いてくれることでしょう。


八王子実践 高等学校

コロンビアインターナショナルスクール 専修学校高等課程
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