自分の使命(MISSION)に気づき,進路を選びとる
Introduction
カトリック校・東京純心女子は,平和のために行動する人を育てるべく,「しっかり勉強して実力をつけること」を大切にしています。2023年度より,Find Your Mission(FYM)プロジェクトがスタートしました。13:00までに正課授業を終え,放課後14:00から15:30までは,生徒それぞれの使命(MISSION)を探る,多彩な講座を大学のように展開。この大胆かつ丁寧な取り組みに教員のさらなる指導力向上をめざす「純心改革プロジェクト」も始動し,生徒の進路実現をサポートします。
本校は特進コース(40名募集)とセレクトコース(100名募集)の2コース制です。四年制大学への現役進学率はほぼ100%。特進コースは一般選抜受験者が多く,セレクトコースでは約7割の生徒が,学校推薦型選抜の公募制や豊富な指定校推薦枠,総合型選抜など―いわゆる年内入試を利用しています。
一人ひとりに寄り添った受験指導
この春,東京外国語大学国際社会学部ロシア地域専攻に進学した船引結有さんには,子どもの頃に過ごしたロシアと日本との友好関係に貢献したいという夢があります。希望していたロシアの高校への進学は,ウクライナ侵攻のため叶いませんでしたが,高校3年間に様々な体験を重ね,思いはより確かに。

本校では,1年次より年に複数回,外部模試を受験。事前に教科毎の目標を決め,学習計画を立てます。「大切なのは,模試終了後」と力を込めるのは進路部顧問の金谷博臣先生。計画→結果分析→次に向けてステップアップの勉強計画を立てる,というサイクルで学力を伸張させていきます。
また,特進コースでは金谷先生が,全生徒と個別に“コーチング面談”を実施。「待つ・聞く・褒める」を心がけ,生徒の笑顔とやる気を引き出します。各生徒の高い志を,進路という形に導く手厚い指導は,2024年度,特進コースから3名が東京外国語大学の学校型推薦(公募制)に挑み全員合格,という結果につながっています。


学校推薦型選抜と一般選抜との両方を視野に入れて大学の受験準備をしました。推薦の志望理由書作成時は,文章や内容についてこまやかな指導があり,何度も書き直し練り上げていきました。本番の面接では,これまでの自分の経験,高校時代の活動,将来の展望に筋が通っているかを見られたと思いますが,軸がぶれることなく答えられました。(学校推薦型選抜の公募制で東京外国語大学に合格)
1年次より進路に向き合い,年内入試で多数進学
近年,いわゆる年内入試を活用する生徒が増加。特進コースにもその傾向は見られます。総合型選抜は3年次の9月から出願が始まるので,志望理由書の添削はコースの別なく,全教員が生徒1〜2名を担当し徹底的に指導します。FYMにも「小論文対策 志望理由書添削」講座を設置。セレクトコースでは,67.9%が年内に進学先を決めました(2024年度)。

高3の夏から,課題図書を読みこんで,小論文を完成させることに力を入れました。また,一般選抜の英語には,他の大学にはない放送内容の要約や自由作文があるので,その対策を中心に勉強しました。
年内入試に対応するために,早い段階で進路を決めることになりますが,この点について進路部部長・純心プロジェクトリーダーの清水萌子先生は,「少しずつ,進路に向き合う機会を設けています」と話します。
1年次の秋に,2年次の文理選択に備える進路研修を実施。大学入試の仕組みや大学での学問とは何かを知り,自分の進路をしっかり考えます。大学に通う卒業生も,自分の体験を話しに来てくれます。2年次の夏になると,「大学研究」で2大学以上を訪問し,秋に志望理由書を書いてみます。
また,セレクトコース1年次(2025年度は全員の予定)にはセブ島海外研修があります。ドン・ボスコ・テクニカルカレッジ セブの学生との交流や,英語のレッスン,スラムでのボランティア活動などを経験。異なる文化,環境の中で過ごし,改めて日本や自分自身を見つめ,生徒は自分の課題に気づきます。
「やりたいこと,好きなことに気づいた上で,自分自身で進路を選びとってほしい」と清水先生。なかなか進路を決められない生徒がいたら,新たな選択肢を示し,自分自身のMISSIONに気づけるように問いを投げかけるのが純心流の進路指導です。

将来を考えるきっかけとなる高大連携
現在,東京女子大学,北里大学,東京薬科大学,清泉女子大学,恵泉女学園大学,国立音楽大学,東京純心大学と高大連携協定を結んでいます。模擬講義や実験・実習体験をすることで,大学での学びをリアルに意識するきっかけの一つとなり,生徒の学ぶ姿勢にも良い影響を与えているようです。大学により,連携校推薦があるのも大きなメリットです。


「ありたい自分」を見つけ,実力を養うFYMプロジェクト
FYMプロジェクトは,生徒がクラスや学年,中高の枠を超えて興味・関心のあるプログラムに参加。学期ごとに自由に選べ,大学のように自分で作る時間割で学びます。
約50の「体験活動系講座」と,約40の「学力養成系講座」とがあり,校内満足度調査で,97%以上(2023年度調査)の生徒が「大変満足」と回答。9月の文化祭や学年末の発表会で成果を発表する講座もあり,モチベーションが上がります。「将来やりたいことが見つかった」という声も。
以下のFYM特設ページより活動内容や生徒・保護者の感想をご覧いただけます。
https://www.t-junshin.ed.jp/fym/

苦手な科目は,2年次から学力養成系講座や受験講座を活用しました。2年次には,3年次の特進コース向け講座で,上級生に混じって難しい問題にチャレンジしたこともあります。


次のステップへ,純心改革プロジェクト始動
清水先生は,近年,生徒の興味・関心が,世界の動きや先輩の話に触発されて,外向きに変化していると感じています。国際系の学部・学科を,国際社会,国際法という分野から選ぶ生徒が増えているのは一例。一連の改革や取り組みの成果と言えるでしょう。
さらに2024年度より,教員の教科指導力をあげ,生徒の第1志望校合格をサポートする「純心改革プロジェクト」を始動。教員同士の授業相互評価,ICTや探究型授業の効果的な取り入れ方や課題克服に有効な指導方法など,幅広い視点で検討しています。現在の教育や入試制度は教員自身が受けてきたものとは大きく変化しているので,2年目になる今年は,それをアップデートする仕組みを定着させていきたいと意気込みます。

平和教育は純心女子の原点
本校の起源は,長崎への原子爆弾投下により,多くの犠牲者が出た純心女学院です。被爆の傷心から立ち上がったシスター江角ヤス先生は純心女子高等学校として再興し,そのうえで平和な未来に貢献する人を育てるため,東京純心女子高等学校を首都・東京に開校。本校はそのルーツを忘れず,平和教育を大切にしています。
2年次の長崎研修は全員参加。また,8月9日を「純心祈りの日」とし,全校で現地の平和式典を視聴し,平和について考えます。同じ日,「平和の旅人」として長崎に派遣される代表生徒4名は,純女学徒隊校墓掃除奉仕,平和式典,浦上天守堂のたいまつ行列に参加。これから,どのように被爆体験を引き継いでいくか,長崎の純心生と交流します。
高校3年間には,たくさんの出会いや体験,学びがあります。自分の使命に気づき,進路を選びとるきっかけになるでしょう。先生方は,丁寧な指導と改革の手を休めず,一人ひとりを見守り,時には背中をそっと押してくれます。世界に紛争や分断の広がるいまだからこそ,ピースメーカーを育てる純心の存在感が増しています。




ここではキャリア教育についてレポートしましたが,書籍の『首都圏高校受験案内』では,学校基礎情報や,ほかの教育内容,進路情報,入試情報,クラブ活動などを紹介。偏差値,合格・不合格者の分布図からは,合格のめやすがわかります。

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