職業観を持ち,学問につなげて考える進路
Introduction
八王子実践は3コース制(特進コース,選抜コース,総合進学コース)をとり,コースごとに独自のキャリア教育が行われています。重視するのは,生徒各自が職業観を持ち,それを学問に結び付けて進路を選ぶこと。職業観を持てるような教育活動が用意されています。
生徒数1,500名を超える大規模校ですが,先生方は一人ひとりの生徒としっかり向き合い,それぞれの進路希望に対応しています。
進路傾向
大まかには,全体の6~7割が四年制大学,約2割が専修・各種学校へ進学します。
大学進学者の文理比率は,全体で6:4くらいですが,特進コースは理系が多め。大学志望者の半数ほどが,推薦系の入試区分(公募推薦,指定校推薦,総合型選抜)で受験します。学部・学科は多種多様ですが,経済や情報など,実学系が比較的人気です。
専修・各種学校の進学先で多い分野は,看護医療,美容,調理などとなっています。

コースごとの特徴あるキャリア教育
1年次にキャリアガイダンスを定期的に開き,個人面談でもフォローして,生徒が自分の適性を知り,職業観を養えるようサポートします。2年次になると,各自が思い描く職業から,何を学べばよいかを考え,進路を定めていきます。各コースのキャリア教育を見ていきましょう。
難関国公立・私立大学が目標 特進コース
1・2年次合同で「J-CLAP」という探究学習を全員が行い,身の回りや社会の課題に目を向けます。この探究学習が進路の指針となったり,大学入試に活かされたりする生徒は多くいます。進路に直結しなくても,ここで学んだ調査の仕方や身近なことからどのように問いを導き出すかという発想法などは,大学でも社会に出てからも役立ちます。
3年次には希望制の「志望理由書講座」を開講。1年次から利用できる校内予備校「J-Plus」と合わせ,どの入試区分でも合格を得られるよう,人間力・学力を磨きます。

難関・中堅私立大学をめざす 選抜コース
選抜コースはPBL(Project Based Learning/Problem Based Learning)を「総合的な探究の時間」で実施すると共に,通常科目にも取り入れています。課題に向き合う中で知的好奇心が育まれ,仲間と協働して課題解決に至ります。課題解決能力を踏まえた学力をつけることで,キャリアを自ら切り拓き,形成する力が培われます。

幅広い進路に対応する 総合進学コース
2年次に「先進科学クラス」「国際教養クラス」「総合教養クラス」に分かれます。クラスの特性に合わせた,大学や専門学校との「高大専連携授業」を展開。例えば,先進科学クラスは,東京工科大学や日本工学院八王子専門学校で,AIリテラシー,プログラミングなどの講座を受講します。国際教養クラスは,拓殖大学の外国語学部・国際学部と連携した「英語探究」や「第二外国語探究」を実施。総合教養クラスでは,日本工学院専門学校によるスポーツトレーナー養成講座が人気です。興味・関心が刺激される体験により,進路意識が明確になります。

親身で熱心な個別指導
卒業生の松岡愛実さんがどう大学受験に臨み,どんな進路指導を受けていたか,松岡さんのクラスの担任で,現代文の授業も受け持っていた楠瀬透先生の話と合わせて紹介します。松岡さんは志望校を上智大学一本に絞り,学校推薦型選抜に挑み合格。見事な結果ですが,簡単だったわけではありません。

哲学書を読む・読む・読む
現代文の授業で,哲学的な評論文に触れたことから哲学に興味を持ち,上智大学文学部哲学科の受験を決めた松岡さんは,そのために何が必要かを考えます。多角的な物の見方を身につけようと思い至り,哲学書を次々に読んでいきました。選書は,哲学の入門書から,上智大学教授の著書や論文にまで及びました。
3年次6月の終わり頃から読み始め,秋までに20冊以上を読破。ただ読むのでは頭に残らないからと,イギリスの哲学者フランシス・ベーコンの「読書ノートの活用は,研究においてきわめて有用で重要だ」(『超約ベーコン 未来をひらく言葉 エッセンシャル版』佐藤けんいち編訳,ディスカヴァー・トゥエンティワン)という考えに触発され,読書ノートを作成。わかりづらいことを書き出したり,図解したりして内容を整理し,自分なりにまとめて読み返すことで理解を深めていきました。
松岡さんは大学入試の日にもこのノートを持参したそうです。読み返して確認するほか「自分はこれだけ頑張ったのだから大丈夫」というお守りの役割も果たしたでしょう。
-6417cd1e65dde-1024x768.jpg)

レポート添削で何度も何度も書き直し
上智大学を志望するにあたり,松岡さんは最初,一般選抜と学校推薦型選抜の両方を視野に入れていました。哲学への興味がどんどん増すうちに,学校推薦型選抜の方が,学問に対する自分の意欲を評価してもらえると思いました。3年次7月に,1学期の成績が基準に達したことを確認し,学校推薦型選抜受験に舵を切ったのです。
そうすると,4,000字のレポート執筆が必要になります。大学から指定された「なぜ私は哲学を学ぶのか。」というテーマでレポート作成を開始。担任の楠瀬先生が添削してくれました。たくさんの指摘を受けて数えきれないくらい書き直し,何が正解かわからなくなるほど悩みながら,ブラッシュアップしていきました。
松岡さんが在籍していた特進コースでは,総合型選抜,学校推薦型選抜をめざす生徒向けに「志望理由書講座」という課外講座がありますが,スタートが4月だったため,松岡さんは申し込みが間に合いませんでした。しかし,先生との個別のやりとりで,内容の濃いレポートに仕上げることができたのです。
質を高める面接練習
レポート作成と同時に,面接練習も進めます。進路指導部の先生や,レポートのテーマに近い領域の科目の先生などが,個別に担当します。松岡さんの場合は公民の先生でした。練習の頻度は週1~2回くらいが理想ですが,松岡さんは難度の高いテーマだったので,ほぼ毎日のこともあり,平均すると週2~3回くらい練習していたそうです。
「なぜ本大学を志望しましたか」から始まり,レポートの核心に迫っていきます。松岡さんは初め,なかなか言葉が出て来ず,中断してしまうことも度々。何度も練習することで,自分の中の引き出しを増やし,自分の考えがだんだんと言えるようになりました。面接練習で考えたことが,入試本番の面接はもちろん,レポート作成でも役立ったと言います。
面接練習も添削指導も,先生側にも苦労があります。生徒それぞれが取り上げるテーマは多岐にわたり,専門性も高くなっています。先生方がすべての領域に精通しているわけではないので,先生も専門書を読むなどして備えます。
また,生徒の成長を見込んで,先生は意識してやや難しい質問をします。生徒は頑張って回答し,先生はさらに少し背伸びしないと答えられないような質問を投げかけます。生徒がもがく姿を見るのは,心が痛むこともあるでしょう。それでも,生徒は先生の期待に,先生は生徒の努力に応え,質の高い質疑応答が繰り広げられるようになるのです。

国際系学部の多くは英語面接ですし,指定校推薦でも踏み込んだ質問をする大学は増えているようです。どんな面接でも油断せず,専門領域に合った教員が指導に当たるなど,十分に準備します。
高校での経験は一生の財産
「担任の先生はどんな存在ですか?」と松岡さんに尋ねたところ,「受験の時に一番近くにいてくれた存在です」と答えてくれました。楠瀬先生とのレポート添削のやり取りでは,褒められることもあれば,論理の甘さを指摘されて,泣いてしまうこともあったとか。優しさと厳しさを併せ持った指導だったことが窺えます。「受験の困難を一緒に乗り越えてくれる中で,人間的な部分も,自分のすべてを見せたような気がします」(松岡さん)と言うほど,深いところで信頼関係が築かれました。
松岡さんが推薦の勉強をしていく中で心が折れそうになった時は友達がいつも励ましてくれたそうです。悩みや不安を素直に打ち明けられる存在は,心の拠り所となりました。
実は松岡さん,大学附属校の私立中学出身です。順当に併設大学に進学することに物足りなさを感じ,もっと勉強を頑張りたいと八王子実践に入学しました。「高等学校の地歴公民の先生になりたい」という夢を見つけ,志望校を上智大学に定め,努力を重ねました。良き先生・良き友と出会い,八王子実践で得た経験は何物にも代えがたいものとなったことでしょう。

チャレンジ精神によって自己肯定感アップ!
コースの特性に応じたキャリア教育のほか,コースを問わず,今後,学校として力を入れていきたいことがあります。大学入試改革で求められている英語4技能を測る外部試験に向けた取り組みです。これまでは英語検定を中心としていましたが,GTECやTOEICに拡大した特別講座を検討しています。ただし,資格取得だけが目的ではありません。チャレンジ精神の育成が重要なのです。うまくいってもいかなくても,挑戦して課題を乗り越えようとすることで,人間的な成長が見られ,自己肯定感につながります。チャレンジし続けられるよう,先生方が全力でサポートします。


上野学園 高等学校

コロンビアインターナショナルスクール 専修学校高等課程
ここではキャリア教育の詳細をレポートしましたが,書籍の『首都圏高校受験案内』では,学校基礎情報や,ほかの教育内容,進路情報,入試情報,クラブ活動などを紹介。偏差値,合格・不合格者の分布図からは,合格のめやすがわかります。

お買い求めはコチラ

